この間ちょっと気になったこと。
あるワインビストロに行った時のことです。この日の私の目的はジョージア(グルジア)ワインでした。
最近ワイン雑誌などにもよく取り上げられているジョージアワイン。
日本のみならず少し前から世界の著名ワイン評論家なども注目し始めており話題になっています。
日本でもワインバーやビストロなど、
特に自然派ワインを軸に置いているようなお店などで注目されている様子が伺えます。
少し前にこのジョージアワインをいくつか試飲する機会があり、
その時の印象などをふまえて、もう一度、今度は料理と飲んでみたいと思い、どうやらいくつかのジョージアワインを扱っているらしいそのワインビストロにうかがいました。
このお店ではボトルワインは自分でワインセラーに入って行って選ぶことが出来ます。写真のジョージアのロゼワインを手にテーブルに戻り、
スタッフの方に「こちらでお願いします」と手渡すと
「こちらのワインを飲んだことはありますか?」と。
そうジョージアワインは一般的に多いタイプのワインと少し違います。
良く言えば自家製的で素朴な味わい、しかし飲んだこと無い人には
いわゆる還元臭だの酸化臭だのと言われる、人によっては不快だと感じることのある香りが気になる場合があります。
特に白(実際はオレンジ)やロゼは。
なのでスタッフの方がそういったことを懸念するであろうことは
十分に理解出来ます。
「このワインは還元的な香りがわりと強いかもしれないので・・・」
とのこと。
還元臭かどうかはともかく、今までの経験上だいたいこんな感じかな、という予測もありますし、実際問題開けてみなければ判りませんし、それも覚悟の上でのオーダーですから、そのワインでお願いすることにします。
しばらくして、抜栓されたワインと(そういえば目の前で抜栓ではなかったですね)グラスを手にスタッフの方がテーブルに。
グラスを置き、それぞれのグラスにワインを注ぎました。
そう、よくあるボトルチェックのテイスティングも無しでした。
それがこの店のスタイルなのか、単に忘れたのか、それともこのようなワインだから無意味だとしているのかは判りません。
少し気になりましたが、とりあえず、まあ、そう高価なワインでも無いですし、何も言いませんでした。
そんなことより、目の前のワインが気になりますしね。
ワインを味わいうと、確かに香りは地味ですし(この時点では。このあと少しずつ開いていきました。)確かにこういったタイプを飲みなれない人であれば、なんとなく気になる香りもあるかと思いますが、しかし、私としては予測していたよりも、そういった不快臭は問題ない範囲でした。
「地に足の着いたおだやかな味わい」
香りも味わいも決して派手さや艶やかさはないですし、
強いアタックや賑々しい果実味はないですが、ワインの力をじんわり分けてもらえるようなこのワインは、日々の夕食に、自宅で一日の充足感とともに家庭料理と共に傍らにあるイメージです。
そんなことを感じているとスタッフの方が
「10月頃にこのワインの新しいヴィンテージがでるんですが、
それはこれよりもっと香りも華やかで、とても良いですよ。これと全然違います。少し前に試飲会があったので試飲してきたのですが。」
とにっこり。
もちろんお店の方は気を利かせて、
ワインが好きそうな私に対して喜んで貰えそうな情報を、と思い
言ったことなのだと思います。
もちろん、情報としてはありがたい。
でも。
私の気持ちはなんだか複雑になりました。
だって、今目の前にあるこのワインに対しては、
なんの言葉も無かったのですから。
私はこの日、この時間を、このワインと(そしてもちろん同伴者と)
楽しむためにここにいるわけです。
目の前のワインをいかに楽しみ尽くすか、美味しく頂くかが大事です。
今目の前にない、しかし同じ造り手の同じワインとこのような比較されることに意味はありません。
だいたい、私がワインだったら悲しいと思うのです。
あ、ちょっと解り難いでしょうか。
例えば。
あなたがクラブ勤務のお姉さんだったとして、ですよ。
あ、京都の芸子さんでもいいですが、
あるテーブル(お座敷)に付くように店の人に言われ
そのテーブル(お座敷)に連れて行かれ、
「あまり愛嬌のない子なんですが大丈夫でしょうか?」とかなんとか言われながら紹介されて。
さらに「10月には新しい女の子が入るんですが、この子よりもっと華やかで美人ですよ。この間面接したのですが」
と言われるような感じではないですか?
なんだか変な喩えで恐縮ですが。
でもワインの気持ちとしては
「すみません、私で・・・」となるのではないでしょうか。
それはなんかちょっとせつない。
まあ、それはワイン目線?の極端な言い方としても
試飲会ではないのですし、
料理とワインを楽しむために来ているのですから
今目の前にあるワインをいかに美味しくするか、が
本来お店の方の腕の見せどころではないかな、とも思うわけです。
別のアプローチがあると思うのです。
「このワインでしたら、このお料理がお勧めですよ」とか
「こちらは決して華やかではないですが、しみじみとした味わいがありますよね」とか。
その方がもっと目の前のワインを楽しんでもらえるのではないでしょうか。
まあ、そんな言葉がなくとも、
私は勝手にこのワインを楽しみ尽くすので良いのですが。
でもこれがもし、男の子が女の子とデートで来て、
なんか最近話題だし美味しいといいなぁ、彼女に喜んでもらえるといいなぁ、なんて期待感でこのワインを選んで、もし同じシチュエーションならば、ちょっと盛り下がらないか心配してしまいます。
「そうか、今日のワインはイマイチみたいなんだ。」なんて。
余計な心配ですが。
万人受けするタイプではないからこその面白さがあるジョージアワイン、
飲食店でサービスされる方にはなかなか難しいワインとなるのでしょうね。
どうもジョージアワインとの時間は
色々と考えさせられてしまうようです。
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Hiroko (月曜日, 06 10月 2014 17:03)
yo-koさま、久しぶりにお邪魔して読ませていただきました。
ワインの気持ち。
うーん、ブログなのに、素敵なエッセイを読んだような気分になりました。情景が浮かんで来ました♥
ensemble-wine (火曜日, 07 10月 2014 21:38)
Hirokoさま。
お読みくださりありがとうございました。
また嬉しいコメントをくださり恐縮です。
一般的にワインは「香りが華やかである」とか
「味わいが重厚である」
ということが良しとされる傾向にありますが、
人間と同じようにワインも色々なタイプがあり、
それぞれの良さがあるのではないかと思っております。
なんて、私の場合はなんでも好きの単なる酒飲みかもしれませんが(^_^;)