今年は久しぶりに解禁日にデパートやワインショップをいくつか巡ってみました。
多くの方がワインにハマればハマるほど「ボージョレ・ヌーボーなんて」となりがちなボージョレ・ヌーボー。軽やかでフルーティな味は初心者向けのように感じられるからかもしれません。
ましてや近年ユーロがますます高くなり、航空便で入ってくるボージョレ・ヌーボーの価格は、そのカジュアルな内容を考えるとますます割高感が否めないような。しかし現地により近い味わいを楽しめるのは貴重です。
私が訪れた夕方、それぞれのボージョレ・ヌーボー売場は意外と賑わっておりました。
それにしても売場にいると興味深いことがたくさんあります。
まず「樽の風味をつけたしっかりとした味わいのボージョレ・ヌーボー」なるものがあること。もちろん価格も高く、中には五千円台のものまで(!)
お店の方々も「樽でしっかりと熟成させていますから、凝縮感やコクが違いますよ」と薦めていらっしゃるのですが、ヌーボーが収穫された年にすぐリリースされるスタイルであることを考えると、「樽でしっかりと熟成」というのはなんとなく矛盾を感じてしまう私です。
解禁日までの、けっして醸造にかけられる時間が長くない中、
その必要があるのでしょうか。
そもそもボージョレ・ヌーボーとはどのようなワインかを考えれば。
お店の方の説明として、何種類かのボージョレ・ヌーボーの説明をされる際
「こちらはフルーティで軽やかなタイプで、こちらは凝縮感があり旨味やコクがあるタイプです」というのは確かに間違ってはいないのですが、
単にそう説明されると「凝縮感があり旨味やコクがあるタイプの方が上」と感じる方が多いのではないでしょうか?どうでしょう?
ワインというのは常に「凝縮感があり旨味やコクがある」タイプが良いワインであるわけではありません。
そのワインの産地やぶどう品種によって、ワインの良さというのは違うものですから。
試飲される皆さんの様子を見ていると
お店の方に
「軽いスタイルとしっかりとしたスタイルとどちらが宜しいですか?」
と聞かれると「しっかりとしたスタイル」と答える方が多いようでした。
赤ワインには強さや凝縮感を求める方が一般的には多いのでしょうか。
またそういった時の店員さんの答えが面白いのですが
「でしたらばこちらのワインをお薦めします。ただ、ボージョレ・ヌーボーですから、そんなに強い凝縮感や力強さはないのですが」
そう、これも確かに間違ってはいないのですが・・・
凝縮感や力強さ、しっかりとしたコクや味わい、
これらが本来ボージョレ・ヌーボーのスタイルでないことが認識されない限り、店員さんも説明が難しいですね。
そしてボージョレ・ヌーボーというのは、日本において一番有名なワインイベントであるにもかかわらず、そこに集まるのは日頃からディープにワインを楽しむ方々ではなく、どちらかといえばそうでない、もしくは時折の楽しみにワインが存在する一般の方々の方が多いというのがまた興味深いところです。
実際に銀座の松屋さんや、三越さんはそれぞれ10種程度のボージョレ・ヌーボーを試飲販売されていましたが、それぞれ人気のあるものを伺うとどちらも「しっかりとした味わいのもの」「凝縮感ある味わいのもの」
としてお薦めされているヌーボー。
そして確かにそれらは店頭に並ぶ数が減っています。
(さすがに五千円台になるとそう多くは売れないと思いますが)
そしてそれらは当然のようにヌーボーの中では高めの値段がついているものなのです。そして高いラインが売れるほうが、もちろんお店としては嬉しい事でしょう。
そして購入する皆さんの意識としては
「年に一度だしせっかくだから一番美味しいのが欲しい」
↓
「凝縮感やコク、力強さがあるほうがお値段が高い」
↓
「しっかりとした凝縮感があり飲みごたえがあるものが美味しいらしい」
となるのかもしれません。
う〜ん、、、、とそんなことを考えながら、
私が購入したのはラウル・クラージュのボージョレ・ヌーボーと
ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーボー。
ボージョレの方は、そりゃもう、りんごをがぶっと齧ったような
爽やかな酸とチャーミングな赤い果実味のさくさくっとした味わい。
そうそう、これぞボージョレ・ヌーボーでは。
ヴィラージュの方はそれに比べると果実味に深みが増し、まだ落ち着いていないざらっとした苦味のあるタンニンもあり、これは一年後くらいに開けたらそれらがチャーミングな甘さに変わるのではないか、との期待です。
どちらも二千円前半、この売場では一番安いラインでした。
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