ドメーヌ・オヤマダ

パリから戻り次の週末は山梨に。

今回はペイザナ中原ワイナリーに行って参りました。以前ルミエールにいらした小山田さんが独立して、ドメーヌ・オヤマダを造られています。山梨の若手醸造家のみならず他県の若手醸造家さんにも親しまれている小山田さんは、いつもゆったりとして楽しそうな佇まいの方です。

今年のワインは蔵元初の仕込み。2014年は5〜6月は天候も良く病気も少なく、しかし8月から雨が多くなり、9月の収穫期は台風の状況を見ながらの収穫となった年。小山田さんいわく「初の仕込みから最高のワインを造る、という野望は見事打ち砕かれ(笑)」しかし仕込中の樽からテイスティングさせて頂いたワインは2月のリリースが待ち遠しくなるものでした。ペイザナ中原ワイナリーでは蔵元での直売は行わず、ワインは全てインポーターのヴァンクールさんを通して行う予定だそう。そういえば、最近同じく山梨の造り手さんの金井醸造さんも、「今年から一般の消費者への販売は行わない。」そうですね。造り手さんとしてはその方が安定した収入が見込めますし、ワインの受注や発送業務などに追われること無くワイン造りに専念出来ますから、それは良いことなのかもしれません。しかしいち消費者の気持ちとしては、やはり大好きな蔵元さんから直接購入出来る喜びは大きいものです。日本という自分の国のワインだからこそ、造り手さんとの距離感が短いというのも一つの魅力なのではないでしょうか。


もうひとつ考えさせられたこと。

小山田さんに2月にリリースするワインの価格を伺ったところ、多くは二千円前後〜二千五百円でした。内容を考えるとこれは非常に良心的な値付けだと私は思います。「もっと高い価格にしてもいいのでは!?」と言ったファンの方に返した小山田さんの言葉が「でも日本酒なら四合瓶で千円台でも美味しいものがたくさんありますから。」う〜ん、目からうろこ、というか深く考えさせられました。私も含めとかくワイン好きは、ワインそのものだけで価値をはかったり、価値を見出そうとしてしまいがちです。

「ワインが好き」もしくは「この造り手のワインが好き」だからこそ、応援したい気持ちも相まって、ちょっとくらい高い価格でも喜んで購入してしまう。しかも日本のワインの場合、その生産量の少なさからなかなか入手できない、というレア感みたいなものもそこに含まれてしまい、その結果価格に対して大らかになってしまうのかもしれません。しかしそれらの価格は一般的な、マニアではない消費者が聞いたらお酒としては高価です。

今日本各地で新しいワイナリーが次々と生まれていますが、それらは総じて日本ワインが好きな私でも「えっ、わりと高いね。」と感じる値付けです。三千円中盤から三千円後半が多いのではないでしょうか。まだ始めたばかりの造り手で、樹齢も高くなく、それらの価格が本当に内容に見合っているのかどうか。もちろん、ぶどうの樹を植えてから収穫するまでは最低でも3〜4年かかり、実質そのあいだ収入は見込めないわけですし、醸造所を立ち上げれば設備投資もかかります。個人で造られているわけですから、大手のような資本もありませんし、ワインのラインナップを揃えることで価格帯の差をつけることも難しいでしょう。そしてもちろん植物と向き合う仕事に完全な休みはほとんどなく、ワインを造ることは大変なことだと思います。その分の投資や労働力から考えれば、当然の値付けなのかもしれません。そしてそれらが自分の好きな造り手さんであれば、多少高いと感じる価格帯でもファンとしては問題はないのでしょう。しかし、実際に中身のワインの質の高さ、などから考えた場合、そしてお酒の種類のひとつとしてその価値と価格が果たして見合っているのかどうか、冷静に考えることが出来る方はなかなかいないのではないでしょうか?

日本でも千円台、二千円台でも良質なワインを造る造り手さんが他にもいます。海外に目を向ければ、それこそ多くの良質なワインが良心的な価格で造られています。もちろん反対に、生産量を抑え価格を上げることにより、プレミアム感を煽るワインも山ほどありますが。

ワイン好きがそのことを冷静に考えてみることが出来ない限り、

質を上回る価格のワインが増えていき、マニアではなく普通にワインを楽しむ消費者が増えることは難しいのではないでしょうか。


それにしてもさすが発想が日本酒好き(いや酒好き)の小山田さん。

現在なんと米の栽培もされています。

「日本で農業に携わるものが米を作れないようじゃ恥ずかしい。」

とのこと。しびれますね。

な〜んて、「老後の楽しみは日本酒を造ること。」だそうですから

本当はそのための準備だったり?

ワインも日本酒も、これからますます楽しみな造り手さんです。