ポンテ・カネ訪問2

ポンテ・カネは現在ヴィオディナミの認証を取得していますが、これはボルドーにおいては非常に珍しいことです。実際、この日にドライバーと通訳をお願いした方のお話だと、ポンテ・カネがヴィオディナミ始めた当初、周囲のワイナリーから様々な批判やバッシングがあったとか。近代的な設備、そして世界に名だたる銘醸地として、世界各国に輸出されているボルドーワイン。その側面から「進歩的な」イメージが有りますが、「実は結構保守的なのです」とはその通訳さんの弁。実際問題、降水量が決して少ないとは言えない、というより、フランス国内のワイン産地においては比較的多い降雨量となるボルドーですから、栽培において極力自然な状態を求めるのは、それなりに手間や資金がかかることを意味します。

 

ポンテ・カネでは醸造責任者である、ジャン・ミシェル・コム氏が1989年に着任してから、様々な改革が行われています。コム氏は自身の畑も所有し、そこでヴィオディナミによるワイン造りをずっと研究されているそう。(ワインもリリリースしており、日本にも入ってきているようですね)

近年もっともホットな話題となるのは、2012年よりトップ・キュヴェにアンフォラによる熟成を取り入れたことではないでしょうか。このアンフォラはコム氏のデザインによるものだそうですが、これがなかなか興味深いのです。外側は石や粘土により作られていますが、内側は石灰が主となるものと、粘土が主となるものに分かれます。石灰の方はメルロ用、粘土の方はカベルネ・ソーヴィニヨン用、とのことで、なんとそれぞれが栽培されていた土を用いて内壁が作られているとのこと。2012年、まだテイスティングしていませんが、これは楽しみです。

 

しかし、2012年のセカンド・ワイン、「レ・オー・ド・ポンテ・カネ」はA.O.C.の認証が受けられず、フランスにおけるテーブルワインクラスの称号である「ヴァン・ド・フランス」に格下げとなることが決まっています。

私が現地で伺った際には、アンフォラはトップキュヴェだけ、とのことだったので、アンフォラが直接の影響ではないのでしょうが、いったい何が理由でそうなったのでしょう。こちらも機会があればぜひ飲んでみたいものです。近年自然派と呼ばれる生産者が増えるなか、A.O.C.認定がされず、ヴァン・ド・フランスとなるワインが多くなっているとか。そして生産者も、「消費者さえ(その良さを)解ってくれればいい」と、それを良しとする方が増えているそうです。結局は、実際にワインを購入し、口にする消費者の判断に委ねられる、こういうことはワインだけの話ではありませんが、選択の自由とともに、さまざまな責任や時としてリスクが伴うということでもあります。世界中で様々な新しいスタイルのワインが造られていく昨今、格付けや規定、もしくはブランドや評論家の意見だけにとらわれることなく、どのようにワインを選び、どのように判断してくか。ワイン好きにとって難解なことでもあると同時に、重要なことでもあるのかもしれません。