ドメーヌ・マルセル・ダイスへ

日本のワイン好きなら知らない人はいないアルザスの生産者、マルセル・ダイス。

アルザスにおいて、ぶどう品種ではなく、テロワールでワインを語る先駆者です。試飲に訪問すると、やはりテロワールの違いを感じさせてくれるようなワインを薦めてくれます。写真はいずれもプルミエ・クリュ(ダイス氏が個人的に主張しているプルミエ・クリュです。)のロテンベルグとショフウェグ。平均樹齢の違いや、若干のぶどう品種の違いはありますが、それらを差し引いても土壌の特徴を感じることが出来ます。ロテンベルグはレッドライムストーンで写真からも判るように、鉄分が多い石灰質土壌。テクスチャーは肉厚でフルーティ。対してショフウェグは白い石灰質土壌。テクスチャーはひきしまってタイトです。

 

ちなみに、マルセル・ダイスさんはとてもきれいなテイスティングルームがあり、自社の畑の位置を移したテレヴィジョンもありで、訪問者の受け入れ体制が整っています。通常小さなドメーヌだと、なんとなく、家の片隅で試飲、という感じなのですが。案内を務めてくれたスタッフの方の対応もスマート。おそらく私の質問内容や国籍から余計な説明は省き(日本人でここを尋ねる方は、ある程度このドメーヌについて知っている方が、そしてここのワインが好きな方が、従って、ある程度の予備知識の有る方が多いはずです。)しかしこちらの質問にはきっちりと答えて下さり、こちらが興味をもつであろうワインを比較させてくれました。私とほぼ同じ時間に訪れていたアメリカ人カップルには「いいですか?ワインはコーラなどの既成品とは違うのです。例えばコーラならどこで造ろうと同じ味が造れます。しかしワインはそのぶどうが造られる畑が違えば、そのワインの味わいが変わるのです。」というところから説明が始まっていましたが。

 

あと興味深い話は、畑も古くはどの宗派が管理していたかによって、そのぶどうから造られるワインの個性は違う、ということでしょうか。アルザスはフランスでは珍しくプロテスタントが多い地域。ぶどう畑もプロテスタントの所有だった所が少なくないのです。ちなみにマルセル・ダイスではグラン・クリュ・シュネンブルグがかつてはプロテスタント所有の畑だそう。

なるほど、いかめしさ、厳格さ、決して華美ではないそのスタイルから、納得が出来ます。ブルゴーニュワインの話でも、シトー派所有だった畑とベネディクト派所有だった畑で、出来るワインの個性が違うと言われたりしますね。キリスト教とワインは切り離せないものですから、このような観点から畑を見ていくのも非常に興味深いものです。